拠点概要

気候安定化、防災減災、食糧や水の確保、文化の豊かさなど無数にある自然の価値を活用する「自然に根差した解決策(Nature-based solutions; NbS)」の社会実装に必要な科学的エビデンスを提供する。

都市における自然の価値を可視化する

横浜市を対象としてフィージビリティスタディ

近い将来、東京-横浜のような大都市でも、人口の減少が顕著になる「都市の縮退(urban shrinkage)」が進むことが予想される。都市の縮退に伴う都市空間の最も顕著な変化として、既存の市街地内の未利用地の増加があげられ、都市計画に関わる発想の転換や新たなイノベーションが求められている。未利用地を建造物被覆が優占する都市空間における自然被覆のギャップと捉えると、都市における生物多様性を新たに担保したり、不浸透面積の減少による都市洪水の緩和や植生被覆からの蒸発散による微気象調整を通して都市生活に恩恵を与えたり、といった新たな価値を見出すことができる。

本研究では、横浜市が保有・管理している未利用地を対象に調査を行う。以下の3つを目的とする。
(1)横浜市が保有・管理している未利用地が担保する生物多様性とその成り立ちについて明らかにする。
(2)未利用地が支えるさまざまな生態系機能、とくに都市災害の減災機能、を定量化する。
(3)未利用地にとどまらず、都市に含まれる自然全般を対象に、都市における人と自然の関係性を人間の福利の観点から明らかにする。

期待される効果等

 人間社会全体の生物多様性保全に対する行動変容を促すには、生物多様性の重要性を定量的に示す研究の地道な蓄積が必要不可欠である。本課題では、これからの人口減少時代を踏まえ、都市の未利用地に主な焦点を当てて、将来の都市の生物多様性デザインを議論したい。

昨今、地方自治体が所有・管理する未利用地は全国的に増加傾向にあり、横浜市を対象として得られる一連の成果の波及性は横浜市のみにとどまるものではなく、未利用地の利活用を軸とした自然共生型の都市ランドスケープデザインを推進させる可能性を大きく有している。研究成果は学会や論文発表を通じて国際的に発信するとともに,本拠点の連携する横浜市,日本学術会議,環境省,国土交通省,IPBESへも随時報告し,社会や政策との協力体制を築き,NbSの一例として社会実装につなげる。

YNU内の各種事業と密接に連携

Next Urban Lab 自然共生型都市 ランドスケープデザイン
「横浜の自然を学ぶ」 「楽しむ」
生物圏保存地域(丹沢水源林)で生態系サービスへの支払い(PES)を考える